『鍬を握る』2024年度「平和・協同ジャーナリスト基金賞」受賞!

 平和・協同ジャーナリスト基金(東京)は29日、第30回基金賞の大賞に本紙連載企画「鍬(くわ)を握る 満蒙(まんもう)開拓からの問い」を選んだと発表した。「個々の人間に経験を語らせ、国策が個々の開拓団員に与えた影響が浮き彫りにされている」などと評価した。本紙の大賞受賞は、日韓対話の糸口を探った2020年の連載「記憶を拓(ひら)く 信州 半島 世界」に続き2回目。

 基金は、平和や人権擁護の分野で優れた報道作品を顕彰しようと1995年に設立。今回は推薦・応募計74点(活字30点、映像44点)から大賞1点、奨励賞7点を選んだ。各賞の贈呈式は12月7日に都内の日本記者クラブで開く。

 連載は、昭和前期に都道府県別で最多となる3万3千人の開拓団員を満州(現中国東北部)へ送り出した県内から、満蒙開拓の歴史が今なお社会に問う課題をひもといた。1~6月に計64回を掲載。逃避行や避難生活で多くの犠牲を生んだ歴史を忘れずに語り継いでいくため、元開拓団員の記憶をたどり、中国帰国者とその家族が置かれた状況を丹念に追った。

 開拓団女性の証言などからジェンダーの視点での検証を試みた他、朝鮮人満州移民や被差別部落からの移民など、これまで見過ごされてきた人たちに焦点を当てた取材も展開。県民を満州へと駆り立てた本紙報道も振り返った。その上で、国策に押し流された先人たちの生き方に向き合い、学ぼうとする取り組みを伝えた。9月に書籍化した。

 連載について同基金の運営委員は、加害の側面にも触れながら、満蒙開拓について幅広い視野から深く掘り下げている―と評価。関連するこれまでの新聞報道と比べても「総合的かつ緻密な取材と記事」だとした。

 本紙はこれまで、同基金賞の奨励賞を長期連載中の『憲法事件を歩く』」(2023年)や連載「戦後77年 平和を紡ぐ旅 26歳記者がたどる」(22年)などで受けている。

(11月30日本紙掲載)


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平和・協同ジャーナリスト基金のサイト

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